平瀬智行のNOW VEGALTA
前半戦のベストゲームは積み重ねた力が表現できた大宮戦

フィールド前半戦はけが人が多かった中でも、上位とさほど勝ち点が離れていないことを考えればよくやったのかなという印象ですね。リーグ戦とACLを並行して戦い、新しい4-3-3のシステムに挑戦しながらもこの成績ですから。4-4-2に戻して連動性が出てきたというところはあります。ただDFに関してラインが深くてボランチの富田晋伍・角田誠の動く距離が長くなっているので、もう少しコンパクトに戦いたいですよね。スタートダッシュができなかった要因として、けがで選手がそろわなかったということがあります。その中でも今年、手倉森監督は「自分たちでボールを握って攻撃の主導権を取るサッカー」をチームに植え付けようとしています。実際ボールポゼッション率(ボール保持率)は上がっているんです。昨年はJ1の18チーム中11位と低かったポゼッション率が今季は一時2位まで上がっているんです。手倉森監督は就任してからの6年間でカウンターや前線からの攻撃的な守備など毎年新しい要素を取り入れてやっています。第11節の大宮戦は、積み重ねてきたすべてが出せたベストゲームでした。粘り強くセカンドボールを拾えたし、前線から相手にプレッシャーをかけてボールを奪いカウンターも良く効きました。こういう試合を続けられればもっと強くなっていきますよ。
前半戦でウィルソンは点をとって活躍したし、ボランチも良かったけど…、印象的だったのはやっぱり赤嶺(真吾)ですね。あまり点は取れなかったけれど守備も献身的にしていたし、前線で攻撃の起点になっていた。チームの汗かき役として努力していた彼の動きがあったからこそ耐えられたのかな?と思いますね。数字に表れない努力って必要なんですよ。FWって点を取れない時に、次は何をするかという切り替えができるかどうかなんです。守備に関しては(上本)大海がケガから戻ってきたらチームがすごく落ち着くんじゃないかな。彼がいればDFラインを上げられて前線と最終ラインがコンパクトに保て、いいサッカーができる。早く帰ってきて欲しいですね。

後半戦、上昇していくために必要なのは攻撃の連動性

ボールポゼッション率が上がっていてそれはチームとして大きな進化だけど今はその先がまだない。ボールを持つけど、引いた相手を崩せない所がある。ボールを支配していても勝ちきれない試合が続いているのは相手を崩してゴールを決めきれていないから。うまくポゼッションしながら攻撃のスイッチを入れるところを早く見つけたいですね。選手同士のパスを出す、動くという意志の疎通ができると10本つないでいたパスを5本に減らしてそこからスルーパスも出せるしシュートチャンスを増やせる。どこかのタイミングで攻撃のスイッチを入れてシュートまで行くという攻撃のスイッチを入れる役目は中盤の梁勇基や太田吉彰、富田、角田だと思います。2列目の選手がFWを追い越して行くような動きなどボールを握りながら、前線の選手たちが同じ意識を持って素早く連動してゴールを狙うことができるかが今後の課題です。

夏真っ盛り、出てこい!若手!!

夏場は若手が伸びて来て欲しい。武藤(雄樹)は練習試合で点を取っているけど、公式戦で点を取ったりアシストをしなければなかなか評価は残らない。結果を残さないと。もっと試合に出た時にはゴールに貪欲になって欲しい。レギュラーの選手は若い時に自分で結果を残して評価されてきた選手ばかりだし、そういう選手が信頼される。武藤に足りないのは結果です。せっかくドリブルやDFの背後への飛び出しなどいいもの持っているからね。今の若い選手は結果を出してレギュラーをつかもうという貪欲さが足りない。僕らが若い時はいつも怒られながらやっていました。当時鹿島アントラーズ監督だったジーコによく怒られましたね。アウトサイドでシュートを打ったんですよ。そうしたら「ちゃんとインサイドで打つんだ!!」って(笑)点を取っても怒られました。インサイドキックの方がアウトサイドキックよりもゴール成功率が高いです。ジーコは選手にその正確さを求めるんです。「アウトサイドで打って入ったのはたまたまだ。しっかりとした基本で打ちなさい。より確率の高い方を選びなさい」ということ言われていました。

ACL初挑戦、アジアで感じた経験の差

写真ACLのグループリーグは他のチームよりベガルタの方が相手陣内でより多くボールを回して、良いサッカーをしていました。自分たちで主導権を持って戦うことができていたと思います。ただ、経験が足りなかったのかな。Jリーグとは違う対戦相手だし、環境の違いもあるので難しかったと思うんですよ。仙台にほぼ日本代表選手がいないということは、海外での試合を経験している選手も少ないということです。経験不足を考えると今年のグループリーグ敗退は仕方がないのかな。韓国やタイのサッカーは日本とはプレースタイルやフィジカルコンタクトも違いますからね。難しいながらも経験して次の年に生かすしかないです。ベガルタの組織力や連動性はアジアの他のリーグにも負けていないですからね。手倉森監督もグループリーグ敗退を本当に悔しがっていました。「今度はもっと相手を動かして崩す、相手の力を利用して勝つサッカーする。また来年行ってやる!!」って言っていましたよ。海外への移動や様々な国の選手たちと対戦できたこと、そして完全アウェイの環境でプレーできたこともいい経験になったと思います。

子供たちに夢のきっかけを与えるのがプロスポーツ選手の役割

最近ベガルタ仙台の選手たちが仙台市内の小学校で「夢教室」の先生をしています。夢教室は仙台市が行う教育プロジェクトの一つで、地域のプロスポーツ選手などを講師に招いて、子供たちに自分の将来に興味を持ってもらい夢に向かう力を育む授業です。僕もこれまで何度も「夢先生」してきました。そこでは自分のサッカー選手としての経験、夢を持つきっかけやそこから立てた人生プランについて話しています。こういう経験を現役の選手たちがするというのはとても良いことですね。せっかく宮城にはプロスポーツチームがたくさん存在する。子供たちと選手がふれ合える機会がたくさんあって欲しい。積極的に学校をまわり、コミュニケーションとることが大事。サッカー選手になりたい!という子供たちの声を聞くとやっぱり嬉しいです。仙台にベガルタの選手たちがいるんだから、子供たちに「自分も将来こうなりたい」と夢を与えられるようなことをもっとやっていかなきゃ。子供たちが自分の将来に興味を持つきっかけをベガルタの選手たちが与えられたら良いですよね。

夏真っ盛り、出てこい!若手!!

サイン何と言っても仙台のサポーターは熱いですよね。スタジアムで応援してくれる姿はもちろんですが、ベガルタ仙台との関わりの中で地域の復興支援を進めてくれている。サポーターが応援歌CDを制作・販売してその収益を地元のサッカー少年団のために役立てているんですが、自主的にしている地域復興支援活動をチームも一緒にやっていくというのは大切。チームがサポーターも含めファミリーのようなものになっていけばいいですよね。僕は仙台サポーターと一緒にやりたいことと言えば、田植え!田植えですよ。初めて仙台に来た時、宮城のお米の美味しさに驚きました。全国に誇れる宮城のお米をサポーターや地域の人たちと一緒に作ってみたい。手で植えていきたい。やっぱり宮城ならではのことをやりたいですよね。アンバサダーとして3年目ですけど、まだまだだと思っていますし、やりたいことはこれからいっぱいあります。チームと一緒に、僕自身もこれまで以上にベガルタ仙台アンバサダーとして成長していきたいですね。

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